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議決権行使の先に:日本の2026年定時株主総会、気候リスクを含むガバナンスに関する取締役の説明責任の転換示す

2026年 7月3日
マーケット・フォース(Market Forces)

このほど、マーケットフォースが株式を保有する企業のうちメガバンク3行(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ)および総合商社2社(三井物産、住友商事)の2026年定時株主総会での議決権行使結果が開示されました。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)取締役会長の髙島氏の再任への21.47%の反対票が集まったことが判明し、対象企業のガバナンス(企業統治)に対する投資家の目が一段と厳しくなっていることが示されました。

MUFGの指名委員会委員でありグループCEOを務める半沢淳一氏も、東京で開催された今年の定時株主総会において、同氏の選任に対し11%という高い反対票を投じられました。

2026年4月より、マーケット・フォースは、日本の主要企業とそのガバナンスの責任を追及する取り組みを開始しました。企業のコーポレートガバナンスにおいて、重大な気候変動リスク、移行リスク、および規制リスクを監督する体制に構造的な欠陥があるとして、機関投資家に対し、取締役会議長、指名委員会委員長、監査委員会委員長を含む主要な取締役の再任に反対票を投じるよう推奨していました。

日本の主要企業の多くがそうであるように、対象取締役が投資家からの強い圧力に直面しました。私たちが今後注目するのは投票結果だけでなく、「投資家」「取締役」、そして「目前に迫るプロジェクトごとの資金配分決定」という3つの明確な領域において、永続的な変化がもたらされることです。

「重要なのは、メガバンクの取締役が、増大する気候・移行・規制・訴訟リスクなどのマテリアルリスクを実効的に監督することであり、株主に対する口約束を実行に移すことです。

機関投資家はこれらの巨大企業に警鐘を鳴らし始めましたが、増大する気候およびガバナンスリスクに対する取締役会の責任をさらに追及すべきです。

取締役会が次に直面する高リスクの化石燃料投融資判断、まずは、先住民族コミュニティ、気候、経済へ深刻な悪影響をもたらす懸念があるPapua LNG 等のプロジェクトをどう扱うかが最初のリトマス試験紙となるでしょう」

(マーケット・フォース、日本エネルギー・ファイナンス・キャンペーナー 渡辺瑛莉)

 

■ 2026 年総会における議決権行使結果(参考)

企業(証券コード) 取締役氏名 (敬称略) 取締役会における役職 2026 年反対票得票率の推計*(%)
MUFG (8306) 亀澤 宏規 取締役会会長・議長 4.45%
半沢 淳一 指名委員会委員 10.84%
辻 幸一 監査委員会委員長 2.76%
SMFG (8316) 髙島 誠 取締役会会長・議長 21.47%
澤田 純 指名委員会委員長 3.34%
門永 宗之助 監査委員会委員長 1.80%
みずほ FG (8411) 月岡 隆 取締役会議長(新任 指名委員会委員長) 5%
大野 恒太郎 監査委員会委員長 3%
三井物産 (8031) 安永 竜夫 代表取締役会長・議長 3.42%
堀 健一 代表取締役社長 CEO 2.07%
中井 一雅 CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー) 1.64%
内山田 竹志 指名委員会委員長 2.99%
重田 哲也 監査役 2.13%
玉井 裕子 監査役 0.94%
住友商事 (8053) 兵頭 誠之 取締役会長 3.56%
上野 真吾 代表取締役 社長 CEO 2.84%
諸岡 礼二 代表取締役 副社長執行役員 財務・経理・リスクマネジメントグループ長 CFO 2.79%
御立 尚資 指名委員会委員長 1.17%
竹田 光宏 勤監査等委員 3.69%

* 注: 上記の表は、金融庁に提出された臨時報告書をもとに集計。反対票の得票率(推計)は100% -(マイナス)賛成票(%)として算出し、棄権票は考慮せず。

■ 2026 年定時株主総会サイクルにおける 3 つの構造的転換

1. 投資家:説明責任のための、より明瞭なフレームワーク

2026 年の総会シーズンでは、機関投資家はコーポレートガバナンス・気候リスクを抱える企業における取締役会議長および各委員会の監督責任を意識し対話に臨みました。マーケット・フォースの「ガバナンスの基本的な期待事項(Baseline Governance Expectations)」はまさに投資家が今、取締役会議長、指名委員会委員長、監査委員会委員長を含む取締役会の主要な役割が、マテリアルな気候・移行・規制・人権リスクに対する監督責任を果たしているか否かを、構造化された形で評価するためのフレームワークです。

このフレームワークを通じて我々が企業に求める転換は以下3 つの重要な動向をもとにしています:

  • 国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見: 移行リスクの強まりを反映し、企業取締役に対するグローバルでの「注意義務」の水準を実効的に引き上げた。豪州の法律事務所 MinterEllison が指摘する通り、「気候関連リスクの蓋然性と規模が増すにつれ、取締役に求められる注意義務の水準も同様に高まる」。
  • システミックリスク認識の拡大: 対象企業との投資家対話は前例のないほどの実質と深さに到達し、投資家は取締役レベルの監督に関する懸念を、過去のサイクルよりも実質的に提起した。これはシステミックな気候リスクが歴史的に大きく過小評価されてきたという機関投資家のグローバルな認識の拡大を一定程度反映している(Carbon Tracker の最近の調査等参照)。
  • ガバナンスに対する投資家エンゲージメントの深化: みずほ信託銀行の元副社長である独立社外取締役の再任否決(2026 年 6 月 23 日の日産自動車の株主総会)のような歴史的な事例が誕生。議決権行使助言会社による反対推奨やルノーの戦略的な15%の議決権棄権も明らかになった本件は、みずほ FG からの真の取締役独立性の欠如が市場で許容されなくなったことを明らかにした。

2. 取締役:個別プロジェクトのリスクへの認識喚起

対象となった取締役は、ポートフォリオ内に存在する財務・法的・人権上のリスクを十分に認識している立場として、公に記録された状態にあります。これら個別プロジェクトのリスクが置かれる文脈は、より広範です――2020 年代前半の二重のエネルギー危機後の LNG 需要の大幅な縮小予測(LNG 価格の変動性および輸入化石燃料依存の不安定性をもたらす)、再生可能エネルギーのコスト競争力の加速、新規 LNG 容量の長いリードタイムといった要素が組み合わさり、直近承認されることが考えられる新規の化石燃料プロジェクトには大きな座礁資産リスクが生じることになります。

 

  • Papua LNG: MUFG、SMFG、みずほFGの取締役は、もはや認識不足を主張することはできない。重要なリスク指標は以下を含む:
    • すでに約 30行の主要金融機関が本プロジェクトへの融資を拒否
    • 2025年 12月、エクエーター原則違反に関する申立てが正式に行われた。
  • Browse LNG: 三菱商事と三井物産が、Japan Australia LNG(MIMI)を通じて共同保有する 14.4% の権益が組み込まれた Browse プロジェクトは、約10 年にわたり保留状態にあり、LNG 生産も合弁権益からの収益も発生していない。両社は既に 2013 年12 月、Browse プロジェクトとの年間 150 万トンのオフテイク契約を解消している。三菱商事三井物産のいずれも、Browse LNG については大きな財務的影響をすでに被っている――両社ともに 2015 年度に各 400 億円規模の減損を計上、プロジェクトコストは 487 億豪ドルに膨らんでいる。最終投資決定(FID)前の段階で、両社の取締役は、これ以上の資本コミットメントを行う受託者としての根拠を説明する必要がある。
  • US LNG プロジェクト群: 日本のメガバンクは、将来需要が極めて不確実であるにもかかわらず、Rio Grande LNG や Venture Global CP2 LNG といった主要なUS LNG 拡大プロジェクトへ大規模なファイナンスを継続している。さらに、日米投資フレームワークに駆動されて、Portsmouth ガス火力発電所という単一資産に対し、総事業費の 3 分の 2 にあたる 220 億ドルもの極端なリスク集中を許容している。本来であれば単一プロジェクトへのエクスポージャーは数億ドル以下に制限されるところ、地政学的フレームワークが伝統的な与信基準よりも優先された格好となっており、取締役会レベルのリスク監督について深刻な懸念が生じている。
  • Mozambique LNG: 三井物産は本プロジェクトの権益を 20% 保有している。同プロジェクトは、カーボデルガード州の治安状況および継続する人権上の懸念を理由として 2021 年以降中断していた。英国輸出信用保証局(UK Export Finance)や複数の欧州 ECA は支援を撤回または一時停止している。にもかかわらず、Mozambique LNG コンソーシアムの一員である三井物産は 2025 年 11 月に不可抗力条項の解除に合意し、2026年1 月のプロジェクト商業活動を再開した。これは高リスク開発の進行に際して資本配分・人権・治安リスクに対する取締役会における精査の深さに重大な疑問を投げかけるものである。

3. リトマス試験紙

我々は今後 12〜24 ヶ月の間、取締役による観察可能な行動が、本キャンペーンの成功を判定するリトマス試験紙とします。取締役への評価にあたり、以下の行動を取るか否かを重視します:

  • 設備投資(Capex)に関する経営陣への厳しい問いかけ: 座礁資産リスク(とりわけ LNG プロジェクト)、コスト軌道、ネットゼロ整合性、石油・ガス事業への追加投資の受託者としての根拠などについて、経営陣に説明を求めます。
  • 独立したステークホルダー情報の取得: 影響を受けるコミュニティ、先住民族コミュニティ代表、技術専門家との積極的な対話。間近に控えた Papua LNG の最終投資決定(FID)は、その直近のテスト機会となるでしょう。
  • リスク・エスカレーション体制の高度化: プロジェクトまたは事業ユニットレベルで特定された重要な気候・人権・評判リスクが、十分な詳細と頻度をもって取締役会に報告される体制を確立し、実効的な監督を支える明確な説明責任のフレームワークを整えます。
  • スキル向上と開示: 気候変動・エネルギー市場・人権に関する取締役の専門性を能動的に高め、そのために取られた具体的な手順を開示します。

■ 企業モニタリングの次の段階

マーケット・フォースは、2026〜2027 年の総会サイクルに向けて、2 つの主要なイニシアチブを推進します:

  • 取締役ガバナンスの追跡と開示: 取締役会による開示および統合報告書を分析し、取締役レベルの監督が実効的に機能している事例、または機能不全に陥っている事例を特定して公表する。
  • 強化された開示フレームワークを通じた機関投資家エンゲージメント: 金融庁が 2025 年 6 月に改訂したスチュワードシップ・コード、および日本に導入される SSBJ 基準に整合したサステナビリティ開示要件を活用し、取締役レベルの説明責任に関する機関投資家との実質的な対話を深化させる。

お問い合わせ先

マーケット・フォース (Market Forces)
Antony Balmain E-mail: contact[@]marketforces.org.au
日本語対応可: 北野 E-mail: [email protected]