電力会社

JERA、中部電力

要旨

中部電力グループは、化石燃料関連事業を拡大する合弁会社JERAによって、顕著な移行リスクに直面しています。取締役にはこのリスクの監督責任があります。しかし、情報開示が不十分な現状では、株主は取締役会がこれらのリスクを効果的に監督できるか評価することができません。その結果、株主自身がこれらのリスクにさらされることになります。 

論点

  1. 中部電力の取締役会は、気候リスク監督に必要な専門知識を有しているように見受けられない
  2. 中部電力は、同社の合弁企業JERAによる炭素集約的な投資がもたらす気候関連の財務リスクを適切に管理していない

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中部電力 株主提案 4月 (EN/JA)

投資家向け説明資料 4月15日

Webinar: 気候変動と日本企業 2024年、日本の総会シーズンで問われる取締役の責務とは

[80 minutes]

よくあるご質問 (FAQ)

なぜ、国際エネルギー機関(IEA)のネットゼロシナリオ(NZE2050)を説明資料の論拠として用いるのですか?

世界の気温上昇を1.5℃以下に抑えることに整合するエネルギーシナリオは、NZE2050以外にも、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表したものなどがあります。しかし、私たちはいくつかの理由から、主にNZE2050を参照します。

    • 最新のシナリオである:IEAは最新のデータを使って毎年シナリオを更新します。エネルギー転換は猛烈なスピードで進行しているため、この点は重要です。これに対して、IPCCの評価報告書は数年に一度しか発表されません。IEAのシナリオは毎年発表されるので、例えばロシアのウクライナ侵攻のように目まぐるしく変化する状況も考慮に入れて調整できるのです。
    • 広く利用されている:多くの大企業や投資家が、投資におけるストレステスト(リスク管理手法のひとつ)などに、すでにNZE2050を利用しています。これは、NZE2050が広範なステークホルダーに十分に理解されていることを意味します。
    • IEAは信頼できる情報源である:IEAは、先進各国における適切な石油供給の確保を目的として創設された政府間機関で、化石燃料産業と協力してきた長い歴史を持ちます。したがって、IEAが化石燃料に反対する傾向にあると非難されるようなことはまずありません。この点が重要なのは、NZE2050のようなエネルギーシナリオは数多くの前提条件の上に成り立つものであり、なかには政治的に意見が対立するような前提条件もあるからです。例えば、今後の石炭と天然ガスの使用量について、IEAのNZE2050は国連の化石燃料生産量ギャップ報告書よりもはるかに多くの使用を認めており、排出量削減のかなりの部分が二酸化炭素回収・貯留(CCS)によるものになると想定しています。
なぜ日本では、定款の変更という形で株主提案を行うのですか?

日本の会社法によれば、気候変動に関する株主提案が適法であるための唯一の方法は、対象企業の定款を変更することです。会社定款の変更は、日本の株主提案において最も一般的な方法でもあります。2021年に提出された株主提案の約3分の2はこの形式のものでした

このような株主提案の法的効力は、バークレイズ、BP、ロイヤル・ダッチ・シェル、リオ・ティント、アングロ・アメリカンなどの英国での上場企業に提出・採択された気候変動に関する「特別決議(special resolution)」と同様であり、各社の定款の一部として法的拘束力を生じます。

なぜ企業に天然ガスからの投資撤退を求めるのですか? 天然ガスは脱炭素に向けて有効な移行燃料ではないのですか?

気候変動を止める唯一の方法は、化石燃料を燃やすのをやめることです。これには化石ガス(「天然」ガス)も含みます。ガスを「移行」燃料と呼べば、その気候に対する甚大な影響を覆い隠すことになります。2010年から2021年にかけての世界のCO2排出量の増加は、その40%近くがガスの消費によるものであり、その割合は石炭をしのぐものでした。

現在、三菱商事やゼネラル・エレクトリック(GE)などの会社が計画しているガスへの投資は、気候に長期にわたる影響をもたらすものです。三菱商事のLNGカナダプロジェクトは、少なくとも40年の生産期間を予定しています。つまりこれは、少なくとも2065年まで、世界全体がCO2排出実質ゼロを達成しなければならない時期よりもずっと先まで、ガスを輸出するための設備だということです。GEなどが建設している新規のガス火力発電所も、稼働年数は約30年です。

パリ協定の目標を達成しようとするならば、天然ガスの段階的廃止を急ぐ必要があります。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の気温上昇を1.5℃以下に抑えるには、2040年までに天然ガスの消費量を63%削減する必要があります。これは、新規の油田やガス田の開発が承認される余地はないことを意味すると、IEAは明言しています。人類がある化石燃料の替わりに別の化石燃料を使用できる時期は、とっくに過ぎているのです。

化石燃料の開発や投融資をすぐにやめたら、停電や電力不足が起きるのではありませんか?

気温上昇を1.5℃以下に抑える方向へと進む世界での需要を満たすのに十分なだけの石炭、石油、天然ガスは、既存の産出地帯から得ることができると、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)などの複数の情報源が指摘しています。マーケット・フォースは、化石燃料産業を拡大しようとする企業や事業への資金の流れを止めることを目指しています。「一夜にして投融資や生産をやめる」という話ではありません。化石燃料の増産と安全な気候は両立しないことを認めましょうという話なのです。

これに反して、化石燃料産業は、石炭、石油、天然ガスはエネルギー安全保障に不可欠だと私たちに思わせたいのですが、それは違います。ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた世界のエネルギー危機が、その事実を浮き彫りにしました。バングラデシュなどの国々では、輸入天然ガス価格が法外に高騰したために、広域停電が繰り返し発生しています。化石燃料を再生可能エネルギーに転換すれば、電力システムはもっと安定し、価格変動の影響を受けにくくなります。これは気候変動を減速させる最も経済的な方法の一つでもあると、IPCCは指摘しています

再生可能エネルギー100%というのは可能なのですか? 化石燃料も使うことでエネルギー源を多様化し、化石燃料を「ベースロード」電源として頼る方が安全ではありませんか?

パリ協定の目標を達成し、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるためには、化石燃料発電の段階的廃止を急がなければなりません。世界全体で見ると、発電と暖房はCO2排出量の39%を占めます。幸いなことにこの部門は、太陽光発電と風力発電という形で、代用手段を最も容易に利用できる部門でもあります。これらの発電と大型蓄電池などのエネルギー貯蔵技術を組み合わせれば、化石燃料発電に置き換えることは可能であり、そうすべきです。エネルギー需要をすべて再生可能エネルギーで満たすことは世界的に可能であり、低コストで実現できることを、数多くの学術研究が指摘しています

重要なのは、再生可能エネルギーを使えばエネルギーの安全保障も改善され、価格的にもエネルギーが利用しやすくなることです。今や再生可能エネルギーは世界の90%の地域で最も安価なエネルギーであり、これを利用すれば消費者の出費は大幅に抑えられます。エネルギー問題のシンクタンクであるエンバー(Ember)によると、2022年、EU諸国は太陽光発電の急成長のおかげで天然ガスにかかる費用を抑えることができ、490億ユーロという膨大な出費を節約しました。世界人口の80%は化石燃料を輸入する国に住んでいるので、ほとんどの国は、石炭、石油、天然ガスの利用をできるだけ速くやめることによって得をする立場にあるのです。損をすることになるのは、エネルギー価格が高いときに何十億もの大金を稼ぐ、エネルギー大手のウッドサイドやサントスのような化石燃料生産会社です。

電力部門で水素やアンモニアの混焼を使用すべきでないのはなぜですか?

JERA(東京電力HDと中部電力の合弁会社)などの日本企業は、水素やその派生物であるアンモニアを推進しています。これらは発電用の石炭に替わる低炭素の燃料であり、既存の火力発電所で使用できると言うのです。しかしこの方法は、非常に多くの問題を抱えています。

まず、水素とアンモニアによって発電由来の排出量を十分に削減できる可能性は低いと考えられます。アジア新興国の電力システムを広く検証したある研究によると、アンモニアの混焼率を50%まで増やしても、排出量は一般的なガス火力発電所よりも低くならず、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるのに必要なレベルに近づきません。その上、水素やアンモニアの製造は、非常に多くの排出を生じる可能性があります。実は、現在、化石燃料企業が推進している生産方法の中には、ただ石炭を燃焼するよりも排出量が多くなる方法さえあるのです。

さらに、水素とアンモニアを燃料とする発電は他のほとんどすべての方法よりも費用がかかります。日本の電力システムに関するある研究によると、再生可能エネルギー技術の大部分が2030年には石炭よりも安価になり、水素とアンモニアは「かなり引き離された二番手」になると予想されます。

上記の理由などから、著名なエネルギー専門家であるマイケル・リーブライク氏は、水素とアンモニアの将来的な利用目的のランキングにおいて、発電を、経済的競争力と必要性が最も低いグループに入れています。

日本の電力需要を再生可能エネルギーだけで満たすことは可能ですか?

再生可能エネルギーを日本の電力システムの基盤とすることは、技術的に達成可能であり、経済的にも理にかなっていると、複数の研究が指摘しています(こちらこちらを参照)。日本は2020年に、発電用の石炭と天然ガスの輸入費用として3.9兆円を費やしました。ロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的な不透明感により化石燃料価格が急騰したため、日本の貿易赤字は悪化し、国富が流出しました。ある研究によると、日本は石炭と天然ガスの輸入を削減すれば2035年までに約3.3兆円を節減できます。2035年には、石炭火力発電にまったく頼らず、水素・アンモニアもごくわずか(1%以下)しか利用せずに、日本のエネルギー需要の8090%を再生可能エネルギーでまかなうことが可能であることが、複数の研究から明らかになっています。残りは、100%再生可能エネルギーが実現されるまでの間、発電所の新規建設や更新を必要とせずに、既存の天然ガス火力発電所からの供給のみで対応できます。

2050年までに化石燃料を使用しない電力システムを実現するため、そしてこれに向け、上述したような中間目標を達成するためには、日本は速やかに強力な政策と市場の改革を進めていかなければなりません。化石燃料を使用しない電力システムを牽引する国の政策の策定や市場の構築においては、非国家アクター、特に市場のリーダー(Asia Shareholder Actionが活動の対象とする企業各社など)の役割が重要になります。

関連情報

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