FAQ
Asia Shareholder Action
A) イニシアチブについて
1) Asia Shareholder Action とは?
Asia Shareholder Action(アジア・シェアホルダー・アクション)は、アジア太平洋地域、特に日本市場における機関投資家のスチュワードシップ責任の効果的な遂行を支援するイニシアチブです。気候変動に伴う財務リスクへの対応を推進するともに、投資先企業との建設的な対話やガバナンスの強化を通じて、投資先企業の持続的な企業価値向上を後押しすることを目的としています。
2) このウェブサイトは誰を対象としていますか?
本リソースは、気候変動がもたらす企業の受託者責任や財務リスクについて、日本に特化した質の高い分析を求める機関投資家、アセットオーナー、運用機関のスチュワードシップ担当チーム、および研究者を対象としています。
3) 投資助言、共同議決権行使や議決権代理行使の勧誘にあたりますか?
いいえ。 当サイトの資料は情報提供のみを目的としており、投資助言、共同議決権行使や議決権代理行使の勧誘を行うものではありません。最終的な判断は各投資家の責任において行われる必要があります。
B) 日本市場のトレンドと変化(2026年時点)
4) なぜ今、日本で株主アクションが活発化しているのですか?
市場改革により、焦点が単なる「ESG形式」から「資本効率」へと移っています。現在、気候リスクへの対応不足は、自己資本利益率(ROE)や中長期的な企業価値に対する直接的な脅威(リスク)と見なされるようになっています。【参照:東証「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」】
5) これはESG/気候関連の重要性が下がったという意味ですか?
いいえ。むしろ気候・ESGはより実質的な段階に移行しています。現在は単なる「ESG」という枠組みを超え、受託者責任に基づく運用管理(Fiduciary Stewardship)として再定義されています。投資家は、気候リスクに対処するために「ガバナンスのレバー(取締役会の説明責任、インセンティブ、情報開示など)」を活用しており、未対処の移行リスクや物理的リスクは、長期的なバリュエーションに対する脅威であると認識しています。【参照:日本版スチュワードシップ・コード(2025年改訂版)】
C) 法的枠組みと株主の権利
6)株主提案を行うための要件は何ですか?
一般的に、総株主の議決権の100分の1(1%)以上、または300個以上の議決権を6ヶ月前から継続して保有している必要があります(法的要件や会社の状況により条件は異なり得ます)。
7)なぜ日本では、定款の変更という形で株主提案を行うのですか?
日本の会社法によれば、気候変動に関する株主提案が適法であるための唯一の方法は、対象企業の定款を変更することです。会社定款の変更は、日本の株主提案において最も一般的な方法でもあります。
このような株主提案の法的効力は、バークレイズ、BP、ロイヤル・ダッチ・シェル、リオ・ティント、アングロ・アメリカンなどの英国での上場企業に提出・採択された気候変動に関する「特別決議(special resolution)」と同様であり、各社の定款の一部として法的拘束力を生じます。
D) 気候リスクと財務リスク
8) なぜ気候変動問題を「ガバナンス」として扱うのですか?
システミックリスクに発展し得る気候リスクは、各社のマテリアルなリスクとして、取締役会の監督責任が問われます。情報開示、内部統制、資本配分は、取締役会の受託者責任(フィデューシャリー・デューティ)の一部です。ガバナンス強化により、気候リスクが各社の監督機関でしっかり管理されるようにします。
9)即時のダイベストメント(投資撤退)を求めているのですか?
私たちは、エネルギー移行期においても長期的な株主価値を維持・向上させるための「建設的な対話」と、科学的根拠に基づく「実効性のある移行計画」の策定を重視しています。【参照:日本版スチュワードシップ・コード(2025年改訂版)】
10)なぜ、国際エネルギー機関(IEA)のネットゼロシナリオ(NZE2050)を説明資料の論拠として用いるのですか?
世界の気温上昇を1.5℃以下に抑えることに整合するエネルギーシナリオは、NZE2050以外にも、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表したものなどがあります。しかし、私たちはいくつかの理由から、主にNZE2050を参照します。
- 最新のシナリオである:IEAは最新のデータを使って毎年シナリオを更新します。エネルギー転換は猛烈なスピードで進行しているため、この点は重要です。これに対して、IPCCの評価報告書は数年に一度しか発表されません。IEAのシナリオは毎年発表されるので、例えばロシアのウクライナ侵攻や他の主要な地政学的事象や紛争のように目まぐるしく変化する状況も考慮に入れて調整できるのです。
- 広く利用されている:多くの大企業や投資家が、投資におけるストレステスト(リスク管理手法のひとつ)などに、すでにNZE2050を利用しています。これは、NZE2050が広範なステークホルダーに十分に理解されていることを意味します。
- IEAは信頼できる情報源である:IEAは、先進各国における適切な石油供給の確保を目的として創設された政府間機関で、化石燃料産業と協力してきた長い歴史を持ちます。したがって、IEAが化石燃料に反対する傾向にあると非難されるようなことはまずありません。この点が重要なのは、NZE2050のようなエネルギーシナリオは数多くの前提条件の上に成り立つものであり、なかには政治的に意見が対立するような前提条件もあるからです。例えば、今後の石炭と天然ガスの使用量について、IEAのNZE2050は国連の化石燃料生産量ギャップ報告書よりもはるかに多くの使用を認めています。
11)なぜ企業に対し、ガス事業の拡大に向けた投資を止めるよう求めるのですか? 天然ガスは脱炭素に向けて有効な移行燃料ではないのですか?
気候変動を止める最も確実な方法は、化石燃料を燃やすのをやめることです。これには化石ガス(「天然」ガス)も含みます。ガスを「移行」燃料と呼べば、その気候に対する甚大な影響を覆い隠すことになります。2024年の世界のCO2排出量増加の最大の要因は、主にガス消費の急増によるものであり、その増加量は石炭をしのぐものでした。
現在、計画中のガス事業への投資は、気候に長期にわたる影響をもたらすものです。いわゆる「カーボン・ロックイン」は避けなければなりません。なぜなら、ガス発電事業やLNG輸出事業は一般的に25-40年間稼働するからです。つまり、現在計画中のガス関連施設は、世界全体がCO2排出実質ゼロを達成しなければならない時期よりもずっと先まで稼働し続けることになります。
世界のLNG業界においても、新規または拡張されるガス輸出プラントに関する最終投資決定がかつてないほど相次いでおり、2025年から2030年にかけて世界的に過去最高水準の生産能力が追加される見通しです。国際エネルギー機関(IEA)は以前、既存および建設中のLNG輸出能力の総量が、2040年までに2.4℃を超えるという破滅的な温暖化レベルと一致していると指摘しています。この投資規模は、パリ協定目標うと2050年までのネットゼロ排出に沿ったエネルギー転換に必要な水準を明らかに上回っており、さらなる増設は、この問題は悪化の一途をたどります。
パリ協定の目標を達成しようとするならば、天然ガスの段階的廃止を急ぐ必要があります。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の気温上昇を1.5℃以下に抑えるには、2040年までに天然ガスの消費量を61%削減する必要があります。これは、新規の油田やガス田の開発が承認される余地はないことを意味すると、IEAは2021年に明言しています。以降の更新版でもこれらの知見をほぼそのまま踏襲しています[1,2,3,4]。人類がある化石燃料の替わりに別の化石燃料を使用できる時期は、とっくに過ぎているのです。
E) エネルギー安全保障
12) 化石燃料の開発や投融資をすぐに停止したら、停電や電力不足が起きるのではありませんか?
気温上昇を1.5℃以下に抑える方向へと進む世界での需要を満たすのに十分なだけの石炭、石油、天然ガスは、既存の産出地帯から得ることができると、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)などの複数の情報源が指摘しています。マーケット・フォースは、化石燃料産業を拡大しようとする企業や事業が負債による資金調達を阻止することを目指しています。また、マーケット・フォースは機関投資家と連携し、企業が化石燃料生産の拡大に投資し続けないよう、効果的なスチュワードシップ戦略の推進に取り組んでいます。「一夜にして投融資や生産をやめる」という話ではありません。化石燃料の増産と長期的な企業価値や繁栄は両立しないことを認めましょうという話なのです。
多くの調査結果によると、パリ協定の目標を達成するために必要な投資コストは、化石燃料の拡大がもたらす破滅的な温暖化に伴う損害コストよりも大幅に低いことが明らかになっています。例えば、こちらやこちらを参照してください。
また、輸入化石燃料に依存することはエネルギーシステムが脆弱性を抱えていることであり、社会経済の不安定化に大きく影響してきています。これに反して、化石燃料産業は、石炭、石油、天然ガスはエネルギー安全保障に不可欠だと私たちに思わせたいのですが、それは違います。2022年のロシアのウクライナ侵攻や2026年の中東における紛争によって引き起こされた世界のエネルギー危機が、その事実を浮き彫りにしました。バングラデシュなどの国々では、輸入天然ガス価格が高騰したために、広域停電が繰り返し発生し、エネルギー供給の混乱が起きています。また、輸入化石燃料に依存している日本でも、エネルギーシステムの脆弱性が経済社会の不安定化に大きく影響してきています。輸入する化石燃料を再生可能エネルギーに転換すれば、電力システムはもっと安定し、価格変動の影響を受けにくくなります。
13) アジア新興国でLNGの需要は伸びるのではないですか?
石油・ガスの供給は、その性質上、地政学的緊張の影響を受けやすくなっています。輸入化石燃料への過度な依存によって、アジアの新興国は供給途絶や価格変動のリスクにさらされます。その結果として生じる高騰した、そしてしばしば手が出せないほどの商品価格は、各国の石油・ガス購入能力に影響を及ぼし、これらの経済圏がエネルギーシステムを再生可能エネルギーへと転換しようとする中で、長期的な需要の減少を招いています。国際エネルギー機関(IEA)とブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)は、(バングラデシュで2022年に発生した停電に見られるように)燃料価格の高騰が、エネルギー安全保障と経済の安定を直接脅かすと指摘しています。
イスラエル、米国、イランの間で発生した直近の紛争は、エネルギーシステムを輸入に依存することによる価格変動リスクを象徴するものであり、LNG価格はわずか2日間で47%以上も急騰しました。このLNG価格の急騰により、バングラデシュとインドではすでにガスの配給制が開始されており、バングラデシュは輸入LNGへの依存度が高いため、「電力不足の深刻化」にも直面しています。
パキスタンは、LNG市場の変動を受けて再生可能エネルギーが急速に拡大し、LNG需要を圧迫する典型的な事例となっています。ロシアのウクライナ侵攻後、LNG価格の高騰に伴い、パキスタンは「広範囲にわたる停電」を含む「電力危機」に直面しました。トレーダーらは契約をキャンセルし、契約済みのLNG貨物をパキスタンから転送しました。
太陽光や蓄電池と比較してLNGが高価格であるという特性こそが、かつてLNG需要拡大の有望地と見なされていたパキスタンで、大規模な太陽光・蓄電池ブームを引き起こした理由であり、その結果、2026年分のエニ社からのLNG貨物21便およびカタールからの24便がキャンセルされる事態となりました。パキスタンの事例は、「新興アジア」全域で起こり得る事態を示しており、わずか数年でLNG需要を直接削減する、真に急速な再生可能エネルギーの成長の可能性を浮き彫りにしています。過去5年間で、パキスタンは中国から10億ドル相当のバッテリーと70億ドル以上の太陽光パネルを輸入しました。LNG高価格は需要の消滅を招き、再生可能エネルギーの拡大を促し、LNG成長市場とはなり得ないのです。
これらの国々は、輸入化石燃料に依存する必要はありません。例えば東南アジアには、20テラワット分の未開発の太陽光・風力発電ポテンシャルがあり、これは現在の発電容量の約55倍に相当します。国際エネルギー機関(IEA)は、「そのほんの一部だけでも、将来の需要を満たしつつ、エネルギー安全保障を強化することができる」と述べてまいす。再生可能エネルギーや蓄電池のコストが急速に低下している中、太陽光や風力への転換は、燃料輸入コストを大幅に削減し、エネルギーの自立性向上につながります。
1.5℃目標に沿った道筋への移行は、単なる環境目標にとどまらず、東南アジアにおける経済の原動力となります。
GDP成長率:現在計画されている道筋で既に予想されている成長率を上回り、年平均2.6%増加すると見込まれます。
累積的な利益:この転換により、2050年までにASEAN地域のGDPは4.8兆ドル増加すると見込まれます。
低コストでの系統への統合:再生可能エネルギーを系統へ統合するための送電網のアップグレード(例:予測精度の向上や柔軟な発電制御)の大部分は、大規模かつ即時的なシステム改修を行うことなく、段階的に実施することが可能です。
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